トピックス

2021新年度に入っても鋼材高が続く

『2021年初から価格高騰の傾向続く』
年初の鋼材価格高騰の傾向は2月の中国の春節を境に一時的にでも落ち着くかと考えられていた。アジアの需要減少を見越して、一時的にはスクラップ価格も少し下降に向かったが、旺盛な海外需要もあり、下落幅を超える上昇に転じました。
コロナ禍による世界的な輸送や移動の停滞も、影響を与えています。物流に欠かせないタンカー輸送においても、寄港地での人員やモノの移動制限などにより、交代人員の確保難が厳しさを増し、寄港国の感染状況や規制状況により個別の対応が要求され、隔離措置などの常態化もあり運航スケジュールの遅延なども続いています。
3月に向かっても中国需要の好調さも維持され、中国市況もまだまだ上昇を続けています。

20210310日経22面

『東アジアの鋼板市況も10年ぶりの高値に』
スクラップの高値を受けて、東アジアの鋼板市況も大きく高騰をしています。
世界の中でいち早くコロナの影響を脱したと公言する中国が生産活動をけん引してはいますが、欧米などの諸国も次第に生産活動を再開しています。しかし、世界的な人的移動制限や各国の感染症対策なども厳しい中、多国間物流網は大きく寸断されたままで、スムーズな大量の原材料などの輸送はままならない状態が続いています。
中国にとって最も近隣の調達対象国に韓国・日本・台湾などが大きな役割を果たすようになってきました。世界の生産大国中国の一部の少量調達が近隣の東アジア諸国の一国の大勢を変えるような生産活動に影響力を高めるのは必至の状況になっています。
中国の国内熱延鋼板市況は9年半ぶりの高値をつけ、さらに上昇基調を続けています。

20210309鉄鋼新聞3面

20210313日本経済新聞

『日本国内需要も底打ち』
日本の国内の需要も2020年は自動車などの生産に偏っていた面もあるが、工作機械・大型再開発案件なども少しずつではあるが、反転をはじめ、コロナショック時(2020年6~7月期)よりは需要は回復しつつあります。そのため、素材流通各社も年初に大幅に上がった鋼材価格の転嫁が余儀なくされています。しかし、国内の大多数の景況感は未だ良好とは言い切れない中で、素材価格の転嫁は非常に厳しい状態が続き、各社のしのぎあいが続いています。しかし、メーカーの上昇した価格での契約による品物は商社・流通にすでに2月からは入荷しており、売値の上昇はもはや避けられない状態になっています。

20210309鉄鋼新聞1面

 
『生産素材の品不足は世界的に進行』
中国がけん引はしているが、コロナ禍のなか世界の企業活動はストップし続けているわけではありません。各国とも少なからず生産活動を再開しており、そのための素材物流は復活してきています。しかし、前述の輸送手段(主にタンカー輸送)においてはスムーズな回復は図れず、一度途絶えた物流サイクルを元通りにするまでには程遠い状態が続いています。
20210323日本経済新聞
加えて世界各国が自国の産業・生産活動を復活させることを模索し、資源供給国の制限や政治的な思惑、欧米と中国との対立構図なども組み合わさって企業活動のための様々な資材・原料などの不足が顕著に見えるようになってきました。物流網だけの問題でなく、資源の確保や原料の企業間取引の停滞が各所でおこり、いわゆる「目詰まり」状態が起こっているものと考えられます。
20210321日本経済新聞

 
『年度末、新年度初も素材上昇長引く』
日本国内の鉄鋼メーカーのスクラップ高と原料高も海外同様おこっており、新年度に入っても年初来の鋼材高をさらに助長する局面が続く状況に変化はありません。
状況はインフレの始まる序章とみるべきなのか、足元の需要から考えて暴落前夜とみるべきか判断のつかない不透明な状態が続いています。
しかし、各鉄鋼メーカーはスクラップの更なる上昇を見越し、原料価格の上昇も勘案して更なる値上げを提示している状況にあります。メーカーは価格を押し上げを進め、3月よりもさらに㎏あたり15円(約5%~10%)の値上げを4月から6月の間に実施するとほぼ一方的に通達しています。

20210319日本経済新聞

20210323鉄鋼新聞

『4月度からも鋼材価格は引き続きさらなる値上げが続く』
私たち鋼材流通業もすでに、年初からの値上げも完遂しない状況でメーカーは出荷ベースの待ったのない値上げを宣言し、通達している状況で仕入れ努力の幅を大きくこえる前代未聞の状況下におかれています。
海外の鋼材値上げは今後も進んでいく状況が予想され、各メーカーも値段の上がった海外への販売の方への比重が高まる一方です。海外の市況にひきずられる形で国内への販売価格も上昇を続けているのが現状です。

20210326鉄鋼新聞
 
 
価格推移鋼材単価推移2021.1月

なんとか企業活動を継続するためにはこの値上げの流れに否が応でも乗っていかざるをえません。新年度も徐々にではありますが、鋼材単価の値上げを続けて参ります。
また、一般鋼材・鋼板類だけでなく、新年度からは2次製品・特殊鋼・磨棒鋼などの派生鋼材にも値上げの波は及び、4月後半~5月にはこちらも値上げとなります。
なにとぞ、趣意ご理解の上、今後ともご高配頂けますよう、よろしくお願い致します。

2021.3.29
アダチ鋼材株式会社
info@adachi-k.co.jp